抗年記

何も考えないで年を重ねるのは厭だなー、と

あさりって

アサリ、お味噌汁にしようかなと買ってきた。よしながふみの「きのう何食べた?」の筧さんがよくアサリは冷凍できると言ってるので、そうしようかな。あ、でも連休中に絶対食べちゃうし、とりあえず小さめのタッパーにアサリが顔を出すくらいの水を入れてと。これでまずは砂を吐かせよう。

お、一人完全に口開けっぱなしの奴がいた。これ死んでるよね。でも味噌汁に入れちゃえば食べられるかな。ということで放置。

熱帯夜。今夜も。

このまま台所のカウンターにアサリ置いといて、明日の朝全滅~、台所生臭ーみたいなのは避けたい。冷蔵庫入れとこ。タッパーの蓋は少しずらして酸欠にならないように。どうせ、海の水の中にお住まいなんだから多少水温落ちても死なないよね、ね、ね。

朝。アサリなだけに。(オヤジか私は)

冷蔵庫から取り出して、と。

あーっ!あーっ!口開けてるーーーー、こいつも、こいつも、あ、あ、あっちの奴も。あー、アサリ大虐殺。あたしゃグーラグの監視官になった気分。気分わりー!いや、この後味噌汁にして食っちまおう、と思っていたわけで、どっちにしても死んじゃう運命にしろ、フクザツだわー。フクザツ。生命の尊さっていうと偽善的ですけど、私の胃の中に入ってこそあんたたちの幸せだったんじゃないかだっんじゃないか、冷蔵庫で肩を寄せ合い凍死するなんて、強制収容所のイメージじゃないー?

おい、おいったら(ツンツンしてみる)。心臓マッサージが必要か。ツンツン。あ、生きてるのもいる。だって、半開きだった口しっかり閉じたもんね。おー、こいつは生きていたか。こっちはどうだ。ツンツン。あ、あんたはだめか。そうか。こっちは?そっちは?

全滅ではなく、半滅くらい?うーん、ということは、死んだ奴がヘタレだったってことじゃん。だって、ほら、元気にサバイブしたのもゴロゴロいるわけでー。なんだ、ヘタレか。悲しい気分になって損したよ。ヘタレはだめよ。どんな世界もさ。たくましくなきゃさ。あんた、北海では生きていけないよ、そんなことじゃ。

で、10分後。

おいー!おー、お前らーっ!全員生きとんやないかー!あー、潮吹いてる、潮!頭も尻尾も出してうねうね動いてるよ、うねうねと。あ、また潮吹いた。みんな元気です!えー、いい顔して報告するなよー!メタくそ元気じゃないかー!全員。え?全員?それって、辞書的には「一人残らず」っていうのが「全員」という認識なんですけど。全員元気なの?

でもさ、昨日の時点で一人いたよね。口開けて死相ばっちりのお方が。お一人様。放置したけどさ。でも、タッパーの中の皆さん誰一人としてそんな人はおらしゃりません。(和宮様御留読んだばかりで御所言葉が)皆さんするすると何事ものう、有難く忝うござりまする。てことは、昨日も死んだふり?冷蔵庫に入れる前から?ふてー野郎だ。

詐欺?これは集団「死んだ死んだ詐欺」なのか。あ、こら、潮吹きもいい加減にせーよ!カウンターに置いたPCにまでかかるじゃないさ。あー、もう!食ってやる、味噌汁にして全員食ってやる。そりゃさ、元気な姿をみせてくれたのは嬉しいけどさ。私の胃の中に落ち着き給え。私を一喜一憂させた見返りがそれだよ。悲喜こもごもってこういうことか。